正しい意識で感覚を育て、よりシンプルで効率的な動作を求めて磨いていく。
「着地衝撃をこなす」を先に読んで下さい。
※このページの内容は現在進行中の自分の認識を元にしているので、勘違いや変更の可能性があります。

◎下記よりもっとエコな走り方を検証しています。→「理屈:反力をブレーキにしない走り」(2014-05以降)
「動作の修正(2013-12-27版)」 にて、下記走り方の一部を修正しています。
推進力
前置き
ランニングの推進力は以下の要素で決まると思います。
・腰のキレ(パワー):腹筋群を使って制御(鈍く~鋭く)
・身体のバネ(加速性能):筋肉の伸張反射を制御(鈍感~敏感)

例えば、ゆっくり走る時は鈍いパワーと鈍感な伸張反射を使います。
鈍いパワーと敏感な伸張反射なら、漏れそうで焦って早歩きする感じ。
鋭いパワーと鈍感な伸張反射なら、アッチッチっと砂浜を早歩きする感じ。
スプリントなら鋭く×敏感ですが、持久走は組み合わせの幅は広いでしょう。

この能力を身につける為には「末端を縛り付けるルールに拘る意識」は邪魔です。
イメージできなければ動けないのは事実ですが、それは高度な技を必要とする競技の場合です。
幼い子供は勝手に素晴らしいフォームで走り回ります。走りの本質に技はありません。
また同時に、「精神的・肉体的な要因による筋肉の緊張」も邪魔になります。

最初の課題は下記です。この達成が身体感覚を育てる最初の一歩になるでしょう。
1)末端を縛り付けるルールに拘る意識を無くす(腕はこうする、足はこうする等)
2)精神的・肉体的な要因による筋肉の緊張を無くす(関節の滑らかさ・柔らかさ等)
※場所やウェアをいつもと変えればリラックスできるかも、勇ましい音楽を癒し系に変えるのも手です。
  周りの状況は無視して自己中でOK、自分の身体との対話に集中して下さい。
※正しい姿勢が全ての基礎になります。詳細は「ランニング姿勢」にあります。


走りを距離や速度で評価するのは客観的で比較しやすく目標づくりに重宝します。
しかし、走りは人間本来の姿勢や身体感覚を取り戻す貴重なチャンスも与えてくれます。
前者は競技者の意識で、これに傾倒しすぎるとリスクやストレスが高まります。
後者は、忘れられた「健全な肉体と精神」を再び取り戻せる可能性を高めます。



動きの全体像
赤色が身体の左側、青色が右側を表します。
矢印はエネルギーの向かう方向と大きさ(あくまで感覚的)を示し、左右で色分けしています。
まずギュッと圧縮、そして飛び出し、ソフトに着地は見た通り。
注目して欲しいのは「(1)加速」にある腰と肩の扱い方です。



「(1)加速」では、左足と右肩に腰を介した対角線上の軸が生まれます。
上半身の軸は、右の腹筋群で右腰と脚を引っ張り出す為に使われます。
下半身の軸は、身体を前に移動させる為に使われます。
最大荷重は、この上下の軸が協調する事で生み出され、同時に身体のバネも完成します。
※世の通例に従って、これをクロス軸走法と呼ぶことにします。(笑)

■クロスする軸のCG(姿勢はちょっといい加減です)



重心
これは構成される軸と、その使い方で性格が決まると思います。
1)左右:変化なし
2)前後:変化なし
※静止状態でバランスを維持する為の重心ではありません。
※自分は重心をヘソの下に置いています。



捻じらない
胴体(肋骨・背骨・腰)は左右の動きとは分離して維持します。
結果的に肋骨周辺の胴体は捻じれますが、それを捻じる意識は持ちません。
腰も左右それぞれ引っ張りますが、捻じりません。
※胴体に含まれる要素を捻じって動かすと、前進を妨げる力も生んでしまいます。


腕ではなく肩の理由
一般的に、上半身では腕や肩甲骨の動作を重要視しますが、ここでは肩としています。
それは、肩が後方に残るぐらいの動作をしないと十分な推進力を生めないからです。
但し、実際に使うのは腹筋群と広背筋(たぶん)で、その結果として肩が後方に残ります。
※実際の走りでは肩の扱いは加速の瞬間と同期するので一瞬残すだけです。力みません。

例えば、Qちゃんの腕振りはコンパクトと言われますが、肩に注目してみましょう。
シドニーオリンピックの動画では、肩が力みなく動いています。
こなし方が身につけば、腕はバランスやリズムを取る以外に仕事はありません。
※動画では上体の前傾が無く、胸が開き胴体に潰れがないのもわかります。これこそ腹筋群の威力でしょう。
※腕を引けば腰が出ますが、それは結果的に腹筋群と広背筋が動員されるからと思います。


[2013-11-10 追加]
腕の振れ方
上半身の使い方が腕の振れ方を決定します。腕を振る意識は持ちません。
腕の振れが生まれるシナリオは大きく2種類あると思います。
※リラックスした静止状態から走り始めるのを想定しています。

■シナリオ1:左右の脇腹を交互に前後に振る動作から始める。
脇腹が前に出る→肩はそれに反発(後ろに残る)→
肩甲骨は肩に押されて内側下方向に動きつつ脇腹が前に出る変化に追従する→
肩(後方移動)と肩甲骨(下方内側前移動)の動きに誘導されて腕は下から前に向かって動く。
※ヘソ付近を頂点とした弓型バネのたわみを作ります。(軸脚も含めて)

■シナリオ2:肘を引く勢いで腰を出す動作から始める。
肘を引く→肩甲骨が内側に寄る→肩と肩甲骨の高さは共に変化しない→腕は前後に動く。
※上半身にバネが生まれる可能性は低い。

シナリオ2の問題点が見えると思います。
1では上半身で脚を駆動させる動作(大腰筋伸張)を期待させますが、
2は腕と腰の関連付けだけです。「肩甲骨を寄せて下げる」という指導はこれを補う為にあります。
シナリオ1が満たされるなら、腕の回転方向はお好みでしょう。
「特集:腕の曲げ方と走りの関係」にも関連情報があります。


腰のキレ
腰のキレは腹筋群で生み出します。
[修正]
↑間違ってました、股関節です。但し、腹筋群による支えも必須です。(2014-02-22)
腹筋群は体幹を包むように何層にも渡り存在し、縦・横・斜めの筋線維を持ちます。
鍛えれば、その動作速度は最速で、パワーも耐久性も最強です。
そして走る時の重心位置を含むと言う都合の良さもあります。
※腹筋群の鍛錬は、実際に走りながら行った方が合理的・効果的と思います。


接地時間と荷重と速度「特集:弾むように走る」にも関連情報があります。)
水の上を走るように、身体が沈む前に足を上げる感じで地面との接地時間は短くします。
但し、以下の2つの局面で地面との接地目的は異なります。
A)「(1)加速」では最大荷重を生み出す
B)「(3)着地」では着地衝撃を消す

Aでは、「抜重」の要領と胴体(腹筋群)の伸縮を組み合わせます。
「抜重」では身体全体を落として瞬間的に足裏にかかる荷重を減少させますが、
ここではその時、胴体(腹筋群)を下に伸ばす事で荷重を足裏に瞬間的に集中させます。
また、腹筋群の上に位置する肋骨は浮いている状態になるので、上体の安定性が確保できます。

Bでは、胴体(腹筋群)の伸縮で衝撃を吸収しつつ、その動作をAにつなげます。
腹筋群のクッションと肋骨の浮きによって、荷重の集中を回避しつつ上体の安定性も確保します。

最大荷重は足裏全体を使って生みますが、走行速度が高まるほど加速の必要性は減少します。
つまり、高速時は慣性を優先させ、抵抗を減らす為にBを優位にし、接地面積を減らします。
その結果、脚をムチのように使った転がるような走りになります。
※胴体の潰れは走りの基礎を弱体化します。詳細は「ランニング姿勢」にあります。
走行速度によって腰の動きも調整します。「(1)加速」の項目に詳細があります。


筋肉の伸張反射(?)
ここは何かを語れるほどの認識はありません。
ただ、反応を鈍感にするか敏感にするかの操作はできます。
また、末端の筋肉が優勢になってはいけません。強すぎる反射も扱いにくいです。



では、それぞれの局面を解説しましょう。
(1)加速
右の腰を脇腹で前方斜め上に引っ張りつつ、右肩を一瞬残します。
この肩と脇腹の動きがしなりを生み、それが腰と脚を高速に引っ張ります。
※腰や脚全体に意図的な緊張があってはいけません。
※腰が先に動き、その動きを脚が追う事で加速度が生まれます。この加速度が脚をムチにします。
※この動作は骨盤の中を通る大腰筋を伸ばし、股関節の十分な伸展も促します。
※足は末端加速度で勝手に巻き上がります。
※この一連の連鎖で着地タイミングと位置は自動的に最適化されます。


右肩を一瞬残す為には広背筋を下に引きます。
右の腰を引っ張る為には、右脇腹にある腹筋群を肋骨下から前方斜め上に伸ばします
右腹筋群を伸ばす為には、左わき腹を縮めます。
左わき腹を縮めれば、結果的に左軸足に最大荷重が発生します。
※上下の荷重が合流するのはヘソ下です。ヘソからみぞおちへ続く面が最も前に出ます。
※脇腹を縮めるのは胴体を潰す事ではありません。胴体はいつも伸ばしておきます。
※股関節の伸展が十分でないとバネの威力は出ません。
※股関節の伸展・内旋が十分なら、お尻にハムストリングスが食込むのが自覚できます。


左軸脚は股関節の十分な伸展と内旋が必須です。
この時、お尻にハムストリングスが食込むのが自覚できれば十分でしょう。
荷重は土踏まず側から膝の内側を通りお尻に入ります。
同時に内転筋がフル動員され、脚はロックされます。(膝がそれ以上曲がらなくなる)
これによって脚全体のバネが完成し、最終的に身体全体のバネも完成します。
※脚のロック中は受け身もできません。それ以前の段階で状況を判断しておきます。(障害物など)
※足首に余計な緊張があると関節への負荷が増加します。また、足首の柔軟性も必須です。
※足裏の余計な緊張は不要です。足本来の機能を信頼して下さい。意図的な緊張はその部位を摩耗させます。


走行速度によって腰の動きを調整します。
高速になるほど加速の必要性は減少するので、腰の動きを少なくします。
腰の動きが減少すれば、脚の回転はより速くコンパクトになります。
※自分は高速走行に費やす時間は少ないです。


(2)浮遊
腹筋群以外の筋肉の緊張を全て解きます。無駄な緊張は次の局面への抵抗になります。
腹筋群による上体の維持ができないと、この局面に耐え続ける事はできません。

左腹筋群は先の局面で縮めていたので、ここでは自然に戻ります。(伸びる)
これによって、先の局面と同じ理屈で左脚を引く事ができます。
右脚は大腰筋が勝手に前に戻してくれます。足の勢いを無駄に強めると地面を叩いてしまいます。

[2013-11-10 追加]
右足は巻き上がった状態から膝の前に出る動きに追従します。
膝が前に出る動きが鈍ると、末端の足は膝を軸に下に降りる(前に向かう)速度を加速します。
この動きによって、最も浅い角度で、理想的な位置にソフトに接地します。
つまり、大腰筋の伸張反射に脚を素直に反応させれば、着地衝撃は消えてしまいます。


(3)着地
膝抜きしながらスネを前に倒します。
股関節を伸展させながら、滑らかに腰を前に転がし次の局面につなげます。
左脚は先の局面で引っ張っておけば、ここで何かする必要はありません。
左膝は足より先に動きが鈍るので、足の末端速度は勝手に加速します。
※股関節の伸展がない場合、一般的にそれを「腰が落ちる」と呼んでいると思います


おわりに
ここまで読めば、走ることがいかにシンプルな運動かわかると思います。
ただ、その動作は極限までの効率化を目指して人間本来の性能を使い切ろうとします。
結果的に、今ではそれが走ることに多くの誤解を生む原因となっているのだと思います。

運動会を前に、子供に走り方を教えるお父さんの姿は微笑ましいものですが、
走りに関して言えば、お父さんは子供から走り方を教えてもらった方がいいかもしれません。
また、教育現場での指導が子供の自然な運動能力を奪う事がないよう願っています。

推進力アニメ


■実際の走りの例
足の巻き上がり動作の秘密が知りたいのでその部分を強調して走っています。


ゆるく走っています。


弾めるようになれば、反力で走る為の感覚が磨かれ、土踏まずに自分の体重をギュッと載せて反力を発生させ、身体バネがそれに反発して体が前に弾かれる走り方が手に入ります。そのパフォーマンスを知る為に動画から得られる値を元にして数値的なシミュレーションも行っています。
「特集:弾むように走る」にも関連情報があります。


全ての動画リスト(YouTube)


■背景となる理論を参考にしたサイト
各サイトではリンクしたページ以外にも有益な情報があります。

身体の研究〔からだのけんきゅう〕
ハムテンション

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